日本でも多くの富裕層が持つようになっている
資産管理法人。
「自由に経費が使えるようになって、税金が減る」
「相続税対策になる」
と、聞いたことのある方も多いと思います。
本記事では、資産管理法人とは何か、
さらには設立するメリット・デメリットについて
解説します。
資産管理法人とは
資産管理会社は
不動産や株などの資産を所有している人が、
その資産を管理することを目的として
設立する会社法人です。
設立手続きや契約面など
基本的には通常の会社と同じですが、
通常の会社とは違って営業活動をせず、
オーナー自身の資産管理を目的としています。
資産管理会社をつくった方がいい人とは
資産管理会社を設立するとメリットが得られるのは
以下のような人たちです。
- 個人投資家
- 資産運用や副業を行なっているサラリーマン
- 相続税の発生が見込まれる資産家
- オーナー社長
ではメリットを1つずつご紹介します。
設立のメリット
- 相続税や所得税の節税効果がある
- 所得の分散効果がある
- オーナーが厚生年金保険に加入できる
- 個人事業主よりも広い範囲の経費が認められている
- 相続・贈与がスムーズになる
- 繰越控除の期間が個人よりも長い
1つずつ説明していきます。
相続税や所得税の節税効果がある
節税の観点から、不動産等の資産から
個人として利益を得る場合と、
資産管理会社を設立して利益を得る場合を
比較してみましょう。
所有している資産から得られる利益が
同じ額であったとしても、
「個人」として利益を得るか
「法人」として利益を得るかで
課される税が異なります。
「個人」で課される所得税の
最高税率は45%となります。
この「個人」と「法人」に課される
法人税率の23.2%とでは、
最大で20%以上の税率の差が開く
ことがあるのです。(2022年1月現在)
所得の分散効果がある
親族を役員に就任させて
役員報酬を支払うことができ、
その資産家本人のみに帰属していた
不動産や配当の所得を、
資産管理会社を通じて
親族に分散させることにより、
本人の所得税等を抑えることができます。
オーナーが厚生年金保険に加入できる
そのため、個人で負担していた
国民年金・国民健康保険から、
厚生年金・健康保険に
切り替わることになります。
社会保険に加入することで
以下のようなメリットが得られます。
- 将来もらえる年金の額が高くなる場合がある
- 役員報酬を支払う親族も加入できる
- 追加の負担なしで扶養する親族も加入できる
個人事業主よりも広い範囲の経費が認められている
個人事業として
資産運用や副業を行うよりも、
資産管理会社を設立したほうが、
経費の自由度は上昇します。
相続・贈与がスムーズになる
個人で資産を保有した場合、
その収入は本人のみが得ることになります。
一方で資産管理会社を設立した場合、
家族を役員として役員報酬を支払うことが可能となるため、
本人のみが得ていた収入を
家族に分散させていくことができます。
そうすることで、
家族は最高55%の高い税率である
贈与税の課税対象にならず、
より税率の低い所得税の課税対象として
オーナーから現金を受け取ることができます。
家族に報酬を払って
現金を蓄積させることは、
相続問題が発生したときにも
有効な手段になります。
「物納」のリスクを軽減
そのようなときに資産管理会社を活用して、
あらかじめ家族に現金を蓄積させていれば、
大事な土地や家を手放すような
「物納」のリスクを軽減できます。
相続時の手間と争いのリスクを軽減
そうなると争いが続く、
いわゆる「争続」になりかねません。
ところが、資産管理会社を設立して
資産を移転させていれば、
相続資産が資産管理会社の株式になって
数字で計算できるため、
資産の分割が容易になります。
資産管理会社には、
相続時の手間と争いのリスクを
軽減できるというメリットがあります。
繰越控除の期間が個人よりも長い
個人では最長3年間まで繰り越せますが、
法人では最長10年まで繰越しができるため、
損失が発生した分の税金を
しっかり取り戻すことができるでしょう。
設立のデメリット
- 設立に費用がかかる
- 納める税金や手間が大きくなる
- 保有資産の個人使用はできない
1つずつ説明していきます。
設立に費用がかかる
まず、会社設立時に必要な多額の費用が挙げられます。
法人の設立には登録免許料を含む
法定費用などの費用が必要です。
これは会社の形態によって金額が異なります。
合同会社設立には約15万円
株式会社設立には約25万円
株式会社の例
- 登録免許税:約15万円(資本金額×0.7%と比較し高い方)
- 定款の認証手数料:5万円
- 定款の謄本手数料:約2,000円
- 収入印紙代:4万円(電子定款の場合は不要)
さらに会社設立の手続きを
司法書士へ依頼する場合は、
司法書士への報酬も発生するため、
数万円~十数万円の費用が加算されます。
納める税金や手間が大きくなる
また、法人にすることによって
下記のようなことも、
資産管理会社設立のデメリットと
いえるでしょう。
法人税、事業税、均等割などの
税金を納める義務が発生する
従業員の厚生年金保険をはじめとする、
社会保険料の事業者負担も必要
従業員や外注先の源泉徴収や年末調整といった
経理処理の事務負担が大きくなる
保有資産の個人使用はできない
使用する場合は
役員報酬や配当として処理するため、
総合課税の対象となります。
課税額によっては、
所得税と住民税を合わせて
最大で約55%もの税金を
納めなければなりません。
資産がいくらから設立すればいいのか
個人に比べ、法人に課せられる所得税は
上限が低く抑えられています。
そのため「法人化=節税」という
イメージを持つ人は大勢いますが、
法人ならではの費用や制度があるため、
必ずしも節税になるとは限らないのです。
課税所得330万円から695万円未満までの
税率は20%となっていますが、
330万円を超えた途端にすべての所得に
20%の課税が発生するわけではなく、
330万円未満の部分は低い税率が適用されます。
そのため、800万円未満に対する
法人税率15%を超える所得税率のレンジに入ったとしても、
すぐに法人税額を超えるとは限りません。
また法人税も800万円を超える部分は23.2%の
税率となるため、
所得税との差がさらに広まるレンジがあります。
所得税と法人税だけを考えた場合、
課税所得800万円程度を境に
法人税が安くなり始めます。
ただし住民税や事業税といった他の税金や、
法人でのみ組み入れられる経費の影響などもあるため、
一概に800万円から得になるとは
言い切れません。
総納税額は、資産額や経費の内訳など、
さまざまな要素が絡み合って決まるので、
個人の課税所得が700万円を超えた付近から
法人化を検討するのがよいでしょう。
まとめ
資産管理会社は、
上手に設立すれば節税効果が期待できる一方、
メリット・デメリットを把握しなければ
かえって高い税金を払う可能性があります。
資産管理会社の設立は
本当に自分にとってメリットとなるのか、
慎重に検討しましょう。