日々生活する中ではあまり耳にしない
マネタリーベースという言葉ですが、
実はお金に関してとても大事な言葉で
貯金や生活にも影響する話です。
この記事では
マネタリーベースとは何か、
貯金や生活、
投資などにどう影響するのかを
図を交えながら
説明していきたいと思います。
マネタリーベースとは
マネタリーベースとは
「日本銀行が世の中に
直接的に供給するお金」のことです。
具体的には、
市中に出回っている
流通現金(紙幣+貨幣)と、
金融機関が決済などのために
日銀に預けている当座預金残高の
合計です。
マネタリーベース:617.2兆円
日本銀行券発行高:122.8兆円
貨幣流通高;4.8兆円
ほとんど(約79%)を
日銀当座預金が占めています。
引用元:日本銀行HP「マネタリーベース」
日銀当座預金とは
マネタリーベースの大部分を占める
日銀当座預金とは、
銀行が日本銀行に持っている預金口座です。
「日銀当座預金」や「日銀当預」などとも
呼ばれます。
- 金融機関が他の金融機関や日本銀行、
あるいは国と取引を行う場合の決済手段 - 金融機関が個人や企業に支払う
現金通貨の支払準備 - 準備預金制度の対象となっている
金融機関の準備預金
マネタリーベースと金融政策
日銀がマネタリーベースの量を
コントロールすることで
景気を調整することを
金融政策と言います。
- 景気を良くしたい
マネタリーベースを増やす(金融緩和) - 景気を冷ましたい
マネタリーベースを減らす(金融引き締め)
90年代までの金融政策は、
公定歩合(政策金利)の調節によって
実施されていましたが、
金利操作だけでは日本の景気回復への効果が
限定的となったので、
2013年に発足した
第2次安倍政権のアベノミクスで
マネタリーベースの量を拡大して、
景気回復をしようとしました。
どうやってマネタリーベースを調整するのか
マネタリーベースを操作する
具体的な手法としては
『公開市場操作(オペレーション)』
と呼ばれる手法が使われます。
マネタリーベースを
- 拡大する時には
『買いオペレーション』によって
市場の金融資産を購入し、 - 縮小する時には
『売りオペレーション』によって
金融資産を売却します。
2012年から始まった経済政策『アベノミクス』では、
日銀が資産市場から
債権や株式などを大量に購入することで、
日銀が発行した通貨を
市場に供給していきました。
市場に出回るお金の供給量を増やして
経済を活発化させ、
景気回復を図る金融政策を
金融緩和と言います。
マネタリーベースは物価を上昇させる
マネタリーベースが拡大することで
物価が上昇します。
資本主義経済の原則
世の中の物価は
モノとお金の量のバランスで決まる
世の中に物の量が溢れていて、
お金の量が少ない
という状態が
デフレーションです。
デフレが続くと、個人は
もっと値段が下がってから購入しよう
と消費を先送りにする心理が働くため、
モノが売れなくなり、
長期的に経済状態の悪化を招く
恐れがあります。
マネタリーベースの拡大で
お金の供給量を増やすと
お金の価値よりも
モノの方が価値が高い
インフレーションになります。
インフレーションは、
消費が活発化して
経済に活気を与えます。
マネタリーベースがどのように景気に作用するか
マネタリーベースを拡大すると
物価が上昇する仕組みをご説明しましたが、
ではマネタリーベースが
具体的にどのように景気に作用するのか
をみてみましょう。
1:インフレ率の上昇
マネタリーベースを拡大されると
インフレへの期待で予想インフレ率が上昇して
資産価格が上昇します。
2:円安に動く
マネタリーベースの拡大で
日本円の外貨に対する希少性の低下をもたらし、
為替市場で日本円が売られて
円安になります。
3:雇用の増加、賃金上昇
為替レートが円安に傾くと、
株価は上がり、
利益も増加します。
資産価格が上昇することで、
企業の設備投資や
人材投資が活発化します。
その結果、
求人が増加して雇用が改善し、
改善して人手不足になれば
賃金も上昇していきます。
4:物価の上昇
資産価格の上昇や
設備投資の増加は、
国内のお金を貯蓄から
投資や消費に向かわせます。
この結果として物価が上昇します。
物価上昇は経済的にはプラスの効果がある
物価上昇には、
あまりよいイメージを持たない方も
いるかもしれません。
しかし、経済的にはプラスの効果があり、
緩やかなインフレは経済成長をもたらします。
日本ではデフレを脱却するため、
金融緩和により2%の物価上昇を
目指してきました。
インフレは必ずしも
景気の拡大によって起こるとは
限らない点に注意が必要です。
現に日本では、ウクライナ危機による
エネルギー価格の上昇が
物価の上昇を牽引しており、
景気が回復している状況とはいえません。
マネタリーベースと投資
市場は
「今がどうであるか?」よりも
「未来がどうなるか?」という
予測に基づいて投資活動を行います。
日銀としては、
物価が上昇するまで
投資家やマーケットに『期待』させることが
大切なのです。
マネタリーベースの継続的な拡大は、
株式や不動産などの資産価格の上昇を
もたらすので、
金融政策の先行きは、
資産運用をおこなう上では
必ず押さえておきたいポイントです。
長期的な資産価格は、
マネタリーベースに大きな影響を受けます。
マネタリーベース拡大で資産価値が薄まる?
ここまでマネタリーベースが
物価上昇、経済を刺激をすることを
ご説明してきました。
しかしながら、
マネタリーベース(お金の供給量)が増える
ということは同時に
貨幣価値としては薄まっている
ということも言えます。
2013年に日銀の黒田総裁が発表した
マネタリーベースの拡大で
2013年から比較して
2022年のマネタリーベースは
約5倍になっています。
市場に出回った紙幣の量は
約47%増加しています。
これは、
2013年に1,000万円だった貯金が
1,470万円になっていないと
価値が追いついていないことになります。
額面は担保されているかもしれませんが
価値自体は担保されていないことになります。
日銀当座預金も
500兆円近く増えています。
この部分も
融資などを通じて
どんどん市場に流れていきます。
その分、円の価値が薄くなって
物価が確実に上がっていきます。
円の価値が薄くなるということは
結果的に預貯金や年金の価値も
下がることになります。
まとめ
マネタリーベースは
物価や為替などに影響を与えるので、
生活をする上でも、
投資や資産形成を考える上でも
とても重要なポイントになります。
経済政策の流れや情報を
しっかり掴み、理解して
豊かな人生を歩んでいきましょう。